『飲食業界を盛り上げる』とは、どういうことなのかについて本気出して考えてみた 後編

前回のブログからの続きとなります。
そしていよいよ後編です。
中編では
『専門知識の必要性』
『サービスと作業を教え込む』
という話を書きました。
詳しいことはコチラからどうぞ。

今回の後編はサービス面をメインで書いていきますので、どうぞご一読ください。

各パターンへの
サービスの入り方

前回の最後にお客さんのパターンは大きく分けて5つに分かれますとお伝えしました。その5パターンがこちらです。

・1人
・カップル
・友人同士
・合コン
・接待


さて、では弊社RT Stageなら各パターンにどうサービスに入っていくのか。をお伝えしたいと思います。

『1名様の場合』

まず1名様は個人的に1番目を配らないといけないと考えています。なにせ料理やドリンクが出てくるまでの話し相手もいないわけですから、会話して待っていてもらうということが出来ません。
また、「店員さんと話したい」という方と「1人で静かに飲みたい(食べたい)」という方に分かれますので、その見極めが必要になります。
「話したい」と思っている方に素っ気ない態度はNGですし、「静かにいたい」と思っている方にガンガン話しかけるのもNGです。

まずそこで大切なのは最初にテーブルに入ったタイミングでテーブルの上を目視確認しつつ、簡単な世間話をすることです。
テーブルの上を目視確認するというのは、スマホやタバコの他に「1人で過ごせるアイテム」である書籍や手帳、タブレットなどを出しているかを確認する為に行います。そういったアイテムを出している方は高確率で『自分の世界』に入りたい方なので、私はあまり会話をしないようにしています。

また、簡単な世間話、例えば「今日は暑い(寒い)ですね」や「外、まだ雨降ってました?」などコチラから話してみて、その返答でだいぶその人のタイプが分かります。「Yes、No」などの簡単な返事の場合は「話したく人」、「そこから会話が広がる」という場合は「話したい人」という認識になります。
ここまで分かれば、あとは簡単です。
あまり話したくない方には必要最低限の会話だけでサービスに入り、テーブルに入る回数もなるべく少なくしつつ、心地良く過ごしていただきます。
逆に話をしたい方には、会話をしながら料理やドリンクのオススメをし、密にサービスをすることで楽しく過ごしていただくことを念頭に置いています。

『カップルの場合』

カップルは基本的に2人の世界を作りたいと思っているので、あまりこちらから話しかけたりはしません。
また、たとえどんなに会話が盛り上がっても女性スタッフが男性客に、男性スタッフが女性客に話しかけ過ぎるのもあまり良くありません。いらぬトラブルを生む可能性もありますので注意しましょう。

サービスに入る際は基本的に男性が女性をエスコートしている場合が多いので、女性を最優先に考えてあげると良いでしょう。ドリンク、料理は女性からご提供し、お皿を下げる場合は男性が先に食べ終わっていても女性が食べ終わるまで待つ、料理のおすすめも男性に向けてお伝えする方が「じゃあこれにしようか」とリードしやすくなります。

取り皿の交換、ドリンクや料理の追加のお伺いなど、お二人の会話が途切れたタイミングを見計らってテーブルに入ると「会話を遮られた」などと思われることなく「気が利く良い店だったね」や「良い店知ってるね」とお店を出てからの会話にもしてもらいやすいので、このタイミングを掴むまではトライ&エラーを繰り返しましょう。

『友人同士の場合』

これは男性同士、女性同士、男女全てに当てはまることかと思いますが、テーブル上での会話のトーンに耳を傾けてください。盛り上がって賑やかなら、こちらも元気よくサービスに入りますし、ちょっと真剣、深刻な静かなトーンで話しているようなら、それに合わせてあげると良いでしょう。

私は友人同士で盛り上がっている場合は、「この料理(ドリンク)めっちゃオススメなので、頼んでみてくださいね!」とお伝えし、頼んでいただけた場合は「どうでした?良くないですか?」と会話をし、頼まなかった場合は「え、これ食べ(飲ま)ないで帰っちゃうんですか?!もったいないですよ〜」と『次来たら頼もうか』と思ってもらうようにしています。

逆に静かなトーンだった場合は、1名様の時と同じようにあまりテーブルに入ることはせず、必要最低限のサービスで対応するように心がけています。

『合コンの場合』

合コンの場合は間違いなく元気よくサービスに入るのがベストでしょう。
「盛り上がる」ということに振り切ったグループなので、店内の他のお客さんへの迷惑にならない程度にそのグループを盛り上げてあげることが必要です。
また、合コンの場合はコース予約でない場合、ワインや料理を「どれがオススメですか?」と聞かれることもありますが、必ず男性幹事様にメニューを指差して伝えてあげてください。「◯◯の××です」とメニュー名を伝えてしまうと女性がメニューを見て「これか(この値段か)」となって女性側が盛り下がることもありますので、注意が必要です。

また、あまりにキャラクターの立つ人がサービスに入ると、合コン自体が盛り上がらずスタッフとよく話すグループ客になりますのでお気をつけください。
過去に一緒に働いていたスタッフで、盛り上げ上手な男の子がいました。友人同士、合コンのお客さんを得意としていて毎度かなり場を盛り上げていましたが、1組合コンのお客様の女性陣に気に入られてしまいスタッフを呼ぶにもその子指名で「◯◯くーん!」と呼ばれたり、テーブルに入る時には「あ、◯◯くん来た!ねぇねぇ…」と会話が始まってしまう程でした。
結果、女性陣は楽しく過ごせたようでしたが、男性陣はあまり盛り上がれず…という結果になりました。
これはスタッフのキャラクターが立ち過ぎてしまった失敗例ですが、こういうことを防げれば基本的に「会が盛り上がればOK」だと私は思います。

『接待の場合』

接待はあまりアルバイトスタッフが対応することはなく、社員や店長クラスが対応することが多いとは思いますが、ぜひ知っておいてください。

まず接待は「ゲスト」と「ホスト」が明確に分かれます。なのでまずは「ホストの幹事が誰なのか」を確認、把握しましょう。接待では大きな金額が動く契約に関わるものから、感謝としての御礼の場
としてのものがありますが、スタッフ側は要望がない限り特段変わったことをする必要はありません。

一番重要なのは「ゲスト最優先」であることです。カップルの時の女性と同様、いやそれ以上にゲストの方への配慮、目配り、気配りが重要になります。ゲストが喜ぶことで、ホストも安心できますし「お願いして良かった」と思っていただけます。

例えばゲストがお手洗いに立たれたら丁寧に案内をし、戻られたら扉を開けたりイスを引くなど、ホスト側の手の届かないところまで店側が対応してあげてください。
また、必要であればワインの抜栓、サーブなど技術的なこと、お酒や料理の知識なども必要になってきますので前回の記事であげた座学がとても重要になってきます。

「接待は高価格帯のお店で予約があるものだ」と私も若い頃に思っていましたが、単価4〜5,000円のお店でも予約の可能性は0ではありません。その時が来てから慌てて準備をするのではなく、事前に「こうしてやると良い」という知識だけでも持っておくとバタバタとせずに済みますので、覚えておいて損はありません。

ここまでお客さんの5パターン対応について長く書いてしまいましたが、いかがでしょうか。なんとなく掴めたかな?くらいでも構いません。意外と教えてくれる人の少ない、このパターンを頭の片隅に入れてサービスに入ってみてください。

まだまだ足りない!

前編、中編、後編を通して知識の必要性、作業とサービスの違い、お客さんの5パターンなど色々と書いてきましたが、飲食人そして飲食業界に進もうか悩んでいる人に、もっともっと伝えたいことはあります。あまりに長くなるのもアレなので割愛しています。(また別記事で書こうかと検討中です)

『労働時間が長い』のに『給料が安い』というのが、飲食業に入るか悩む要素の一つにあると思います。長いこと勤めたら給料が上がっていくシステムでもないですし、お店の売上などに左右されることも多々あります。
正直大きな会社ですと、現場よりも本部の方が給料が良かったり…というのは往々にしてあります。
「そこをどうにかクリアにして、『生涯現場主義』という人間が輝けるようにはできないのか」という思いが私の中には強くあります。

現場主義は決して悪いことではないと思います。それだけの能力があるのであれば、評価はされるべきですし上の5パターンしかり、知識、サービスが備わっている人は本当にカッコ良いです。
まさに「これぞプロ」と思わせてくれます。社員だろうが、アルバイトだろうがプロ意識を持って働くべきだと私は思います。

だからこそ、「どうやったらプロ意識が芽生えるのか」ということと、「若い世代が勉強のために外食に行くことを当たり前にできないか」ということを考えています。

チップ制度の導入はどうか

日本の飲食店は料金にサービス料が含まれています。(それでも安く提供しているお店さんには感謝しかありません)でも、「大してサービスなんか受けてないけど…」と思うお店もあります。だったら、料理、ドリンクをもう少し安価にして、欧米のように『チップ』を貰ってもいいんじゃないか?と思います。チップは言うなれば「サービスしてくれたあなたに」という心付けみたいなものじゃないですか。

過剰サービスが当たり前の日本で、これをやるにあたっての課題、そして解決策の答えが私の中で出ておりませんが、お店がどうこうよりも、働く人のモチベーションになるのではないかと思っています。スタッフが十人十色であるように、お客さんも十人十色なので「どうサービスしたら、この人に喜んでもらえるのか」という思考になりプロ意識が持てるのではないかと考えております。

サービスが良い人にはチップが多めに払われて、そうでもない人は最低保証分しか貰えない…という格差が是か非かは置いておいて、「あの人みたいに自分も」となってくれれば良いのになぁ…と思っています。

勉強としての外食

自分の働いている店以外のお店を食べ回るのは、大変勉強になります。サービスの仕方、言葉の選び方、料理の盛り付け方、味付け、メニュー構成など、私もアルバイト時代の若い頃から手の出せる範囲で、色んなお店に行ってきました。

そこで得るものは多く、参考にしたいもの、反面教師にしたいものなど本当に勉強になりました。しかし、これが正社員になると途端に時間とお金という制約ができます。実家住まいならともかく、就職と同時に一人暮らしをすれば家賃の支払いなどに追われ、仕事は朝から晩まで、休日は寝て終わり…のような感じになりました。

サービスを、料理を勉強すればするほどに「ここに行ってみたい」という思いは募れども、なかなかに金銭的余裕がない、という20代半ばでした。そこでふと思ったのが、「飲食店同士で評価し合うミステリーショッパー(以下、MS)はどうだろうか」という点でした。
私が昔働いていた大手飲食チェーンではこのMSを採用して月に4回一般の方が来店され、評価し、点数をつけていました。しかしこのMS、評価項目(基準)が統一されていて「そのシステム、他部署ではそうだけど、ウチのお店はそうやってないんだよな」って所が案の定0点という評価をされてしまいます。

そういうモヤモヤを解消できるように『各店舗でマストにしているサービスや動き、ルールを抽出して、その店オリジナルの評価シートを作ったら良いのでは?』と思いました。
しかもそれを一般客相手ではなく、同業のプロに見て判断して、評価してもらうのはどうだろう。そうすることで、若い飲食人も熟練の飲食人も新たな店や料理の発見、システムやサービスの勉強にもなるのではないかと考えます。

きっとまだまだフラッシュアイデア過ぎて練れていないので、夢物語だと思われてしまいますが、飲食業界の底上げ、地位の向上の一助になるのではないかと考えております。

好きじゃないと
続けられない仕事

ここまで前編、中編、そして長い後編をお読みいただき、ありがとうございます。
ここまで描いてきましたが、きっともっと飲食業界を盛り上げるためのピースはあるんだと思います。それでも、1つずつでも課題を見つけて、「こうしたらどうだろう」と考えるのは、この飲食という仕事が好きだからです。

労働時間が長かったり、変な客に絡まれたり、いきなり不機嫌な客に当たったりと良いことばかりではないですけど、「美味しい料理と、ドリンクの前では人は笑顔になる」と私は思っていて、その笑顔に尽くしている空間が好きなんですよね。

だから、この業界を良くしたいと思うし、せめて弊社だけでも取り組んで声をあげ続けていこうと思っております。そんな飲食業を好きでい続けるためにも、小さくても一歩踏み出していこうと思います。

それではひとまず、「『飲食業界を盛り上げる』とは、どういうことなのか本気出して考えてみた」シリーズ、終幕となります。お付き合いいただき、ありがとうございました。

それでは、また。


Gracias!!

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